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とと姉ちゃんから学ぶパッケージのこと
最終更新: 2020年1月28日
NHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」、私も楽しく見ています。
今週は、主人公の常子が歯磨き粉を作りアルミ製のチューブに入れて販売しようとしたところ、製品が爆発するという事件が起きました。
劇中の星野さんの言うように、歯磨き粉の成分がアルミと化学反応を起こして何らかの気体が発生してしまったんですね。
パッケージに慣れている人であれば、アルミに入れると言い出した時点で「大丈夫?」とハラハラしたと思います。
ドラマでは主人公の前向きな性格を演出するために笑い事になっていましたが、アルミが爆発すればその破片が顔や目を傷つける可能性があり、パッケージの素材選びは容易に行うものではないと改めて気が引き締まりました。
ここで少し、現代の歯磨き粉のパッケージについてお話します。
歯磨き粉は樹脂製のチューブに入っていることが多いですが、化粧品に使われている樹脂製チューブとは素材の構造が異なります。
というのも
(1)上代が化粧品と比較して圧倒的に安価なため、資材費含む原価を下げる必要があり、化粧品と同じものが使えない。
(2)通常、樹脂チューブはPE(ポリエチレン)を主として複数の樹脂が層を成して構成されています。が、それだけでは歯磨き粉特有の強い香りを閉じ込めきれません。
よって、歯磨き粉に使用される樹脂チューブはメーカー毎に独自の開発が進められており、工場や売り先によって品質や価格が大幅に異なります。
アルミチューブは臭いを漏らさない面では優秀ですが、使用過程で自立しにくいなどの理由によって大手市場では採用され難い現状=価格アップにも繋がります。
このように、パッケージはその素材と中に入れるものの成分との相性が非常に重要です。
また素材といっても様々で、例えば樹脂ひとつとっても合成樹脂を含めると無限に種類があり、特にボトル類は一層に見えても実は複数の樹脂や接着層、バリヤー層などが積層されている場合が多く、その構成や厚みによっても油分、酸、アルコールなどの耐性やモノとしての強度が変わります。
結果、中身との相性が悪ければ素材に亀裂が入って中身が漏れ出したり、割れて使えなくなったり、素材の成分や着色染料が中身に溶け出したり、中身と化学反応を起こして爆発したりするのです。
パッケージに限らずほとんどの製品がその使用環境に対して素材の耐性を検証されていますが、その安全基準は販売元や生産工場、または使用環境によっても様々なので、絶対というものはありません。
だからこそ、私たちデザイナーは知識や経験を重ね、出来る限りのメリット・デメリットを挙げ、相談をしながら、お客さまにとって最適なパッケージをご提案していきたい、するべきだと思っています。
