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「日本を包む展」作品について
昨日 の続きです。
今回私が制作したのは、日本語の「あでやか」をテーマとしたパッケージデザインです。
(本展示会では、参加者が用意された8つの言葉から一つを選んでテーマとします)
タイトルは「香薬 艶と誘と夢」
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あでやかとは華やかさと卑近な欲が混在するものと捉え、魅力的な香りで人を翻弄する香水のボトルを作りました。嗅ぐと理性が狂い、本能の、欲のままの世界に誘われる香薬である、と古来伝わる「架空の香水(媚薬)」です。
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最初はなんとなく「色鮮やかで綺麗そう」という軽い動機で選んだ言葉ですが、調べれば調べるほどそれはただ美しいことを表しているのではなく、より妖艶で、その漢字のとおり、時に下品なほど艶(なまめ)かしい様子を表した言葉だと知りました。
またピエブックスから出版されている「日本の配色」によると
「「艶」は赤系統を中心とした華やかで色っぽい配色が生み出す不思議な美の世界を示している。」
「艶の色彩はさらにもう少し成熟した大人の感覚にも繋がっている。たとえば、歌舞伎の中にもしばしば豊かな色の衣装として、この艶感覚の色が現れる、
晩年に初期肉筆浮世絵や歌舞伎に深い興味を持った洋画家の岸田劉生は「旧劇美論」の中で、歌舞伎の色の中に「赤」が非常によく使われていることに気づき、「一体この赤という色は、原始的なものであって、決して上品という訳にはいかない。幼稚であり、野蛮な味を多分に持っている。そして異端で、場合によっては血を思わしめ、また悪魔的でもある。一面華やかではあるが、それは決して上品ではなく、卑近な味、鄙びた味である。」といっている。」
そういった原始的なものが、女性の本能を掻き立て、香気高く美しく見せている、とあります。
言葉の解釈はいろいろあるとは思いますが、私は、清純なイメージというよりは、より生命のエネルギーや原始的な本能、欲を表した言葉である、と理解しました。
とはいえ、テーマに沿っていれば何を作っても自由というのは逆に難しく・・
自分が一番好きなパッケージである「アンティークの香水」と
大好きな世界「ファンタジー」を合わせ、また
・日本語であること
・艶やかという言葉の意味
を踏まえ、「日本のどこかで古くから言い伝えのある、媚薬」という架空の伝説と物を設定しました。
日本に昔から伝わるわけですから当然「和」テイストであることは必須なのですが、どこか不思議な感覚を表現したかったので、ノイズとして「鱗模様」を入れています。
これはヨーロッパでよく用いられる模様なので、「和」と合わせることで少しだけ違和感が漂うようにしました。
もしかして南蛮渡来のもの・・?という出所不明な雰囲気が思考をより困惑させます。
(実はいろいろ違和感を感じる工夫はしてあるのですが、細かいので割愛します。)
白の陶器のような質感で誠実な顔をしながら、金のわかりやすい欲の象徴が人を誘い、赤の原始的な血の匂いと華やかな色気が思考を翻弄させます。
また、各ボトルには不思議な音の鳴る鈴がついており、まるで人魚の歌声のように人を引き寄せます。
(以外にも、鈴がついているボトルってあまり無いんですよね。かわいいのに。)
「艶」やかな世界に「誘」われて、「夢」を見ているような状態になってしまい、戻ってこられるかわからない・・
そんな香薬、媚薬のパッケージです。
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Photo:Yuka Yanazume
「より妖艶で不思議な世界を」を合言葉に、色々と撮ってくれました。
世界を演出するならやっぱり赤。

